FSI in Brain Dynamics
脳運動(ブレーン・ダイナミクス)のFSI
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脳脊髄液の流動と脳組織に対する複雑な相互作用を解明することは中枢神経系の異なる異常の原因を理解して、潜在的な治療を施す重要なステップです。
このニュースでは、水頭症(文献参照)の潜在的な原因に対して幾つかの例を挙げて、ADINA-FSIを用いた脳脊髄液の流動(CSF)と脳組織に対するその相互作用の研究をお知らせします。
図1に問題の概要図を示します。脳脊髄液は脳室、脳脊髄くも膜下腔(SAS)とパルス機構の多孔性実質細胞を通して流れます。血液と脳脊髄液の流動が脳組織の変形をもたらします。この研究のねらいは、脳脊髄液の流動を解明するために解析的に厳密な流体-構造連成システムを使用することです。
正常者と水頭症患者のMRI走査画像を患者に特有なモデル形状と解析的に厳密な多孔質弾性の有限要素モデルに利用します。それぞれの有限要素モデルは、脳脊髄液、脳実質細胞と脊髄管(図2)を含みます。
図1脳の各部位の概略図
図2正常者と水頭症患者における頭蓋脊髄軸系の有限要素モデル
脳脊髄液は、非圧縮の粘性ニュートン流体であると仮定します。実質細胞と脊髄は、飽和した多孔質弾性体(図2)でモデル化します。強制変位境界条件は、心周期中で生じている脳脈管構造の伸張と拡張を表します。この交互の作用が脳脊髄液のパルス状の流動を生みます。
頭蓋脊髄軸系を通過する脳脊髄液の流速と圧力場は、固体(脳組織)の運動の式と結合したナビエ・ストークス方程式とダルシーの式を解くことで計算されました。
上の動画は心周期中の頭蓋脊髄系を通過する脳脊髄駅の流速と圧力場の変動を表しています。
図3は、正常者(左)と水頭症患者(右)の脳脊髄液の流れパターンを比較しています。見たところ、最大流速の位置と大きさが水頭症によって変化しています。
図3正常者(左)と水頭症患者(右)の脳脊髄液の流れパターンの比較
図4は、還流圧力勾配が最大のときの脳室とくも膜下腔を通過する圧力場を表しています。見たところ、水頭症の場合の最大圧力は、正常者のそれよりも5倍以上になっています。
図4正常者と水頭症患者の脳内圧力の比較
図5は、大脳と脳脊髄液の流れパターンによる応力分布を示しています。見たところ、脳脊髄液は大脳中を浸透するだけでなく脳室を通して流れています。脳脊髄液は絶えず脳室で作り出されて、矢状洞を通して再吸収されます。
図5水頭症患者の応力分布と流れパターン
図6計算結果と体内の脳脊髄駅の流れ測定の比較
図6は、正常者と水頭症患者の心周期中の特定部位における脳脊髄液の流速変動を表しています。見たところ、計算された結果は体内のCINE-MRI脳脊髄液測定とかなり一致しています。
更なる結果は、以下のビデオを参照:
この研究は、生体工学におけるADINA-FSIの多くの利用例の一つを提供しています。ADINAは、最高水準の解析能力を複雑な生体工学問題をモデル化するために提供しています。他の利用には、ADINA
FSI Publicationsを参照してください。また、ADINAのBiomechanical Applications of ADINAでも参照ください。
参照
・A.A. Linninger, B. Sweetman, R. Penn, "Normal and
hydrocephalic brain dynamics: the role of reduced cerebrospinal fluid
reabsorption and ventricular enlargement", Annals of Biomedical
Engineering, Vol. 73, pp. 1434-1447, 2009
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