多孔体内部の流れと溶質の輸送の問題は、 多くの実用的な分野において関心の高いところです。 帯水層への海水の浸水、あるいは地下水を通した汚染物質（化学廃棄物など）の拡がり、 地下水を通した核廃棄物の拡がりなどが、この問題に相当します。

このニュースでは、 ベンチマークとして広く使われているElderの問題[1、2]を取り上げます。 境界上の集中質量を指定することで生じる密度勾配によって、 多孔体内部で流れが引き起こされま す。

下の概要図は、 Elder問題のジオメトリと境界条件を示しています。 上側境界の一部には、正規化された1.0という値が一定濃度として定義されています。 下の境界の濃度は0です。 上側2つのコーナーの圧力ヘッドは0に保たれています。 ADINAでは、20年のタイムスパンのシミュレーションを実施しました。

Elder問題の概要

上の一つ目の動画は、 時間を関数として、水中での溶質の分布を示しています。 拡散によって、溶質が淡水の方へ移動します。 また、重い塩水は周辺の水よりも早く沈み、対流パターンを形成します。

二つ目の動画は、 時間を関数とした多孔体内部の流れパターンです。粒子追跡プロットをしています。 興味深いのは流れの渦です。

これらのタイプの物理問題は、 輸送方程式と、移流による流れ方程式とが強く結びついています。 移動現象によって大きな密度変化が起こり、これが輸送方程式と流体方程式の双方向の連成となります。

この例題が示すのは、 密度が起こす多孔体内部の流れと強く結びついたモデル化におけるADINAの強みです。 そしてこれは、ADINAの強力なマルチフィジックス機能の一つです。

References

1. Elder, J.W. A Steady Free Convection in a Porous Medium Heated from Below. J. Fluid Mech., 27(1967) 29―50.
2. Simpson, M.J., Clement T.P. Theoretical Analysis of the Worthiness of Henry and Elder Problems as Benchmarks of Density-dependent Ground Water Flow Models. Advances in Water Resources, 26(2003) 17―31.