今回取り上げる問題は、左に
ある実験室試験の写真で図示されて
います。もちろんエアバッグは自動車の標準装備ですが、最適な使用についてはまだ調査が重ねられています。
今回紹介する解析のユニークさは、ナビエ‐ストークス流体と完
全連成したシェルモデルが、ADINAの陰解法アルゴリズムによって
解かれたことにあります。これにより離散化したそれぞれのタイムステップにおいて、
ソリッドと流体の領域で、完全連成した質量と運動量の方程式が成り立つような繰り返し計算が保証されます。
事故のときにエアバッグが作動することの意義は明白ですが、エ
アバッグの展開による怪我のリスクもまた重要です。このリスクはおもにエアバッグが展開する域にいる乗客に関係します。これはいわゆる「アウトオブポ
ジション」問題で、エアバッグと車内の環境、乗客の複雑な相互関係を含んでいます。
実験で示されるのは、エアバッグの挙動のシミュレーション、そ
れによって乗客にかかる荷重です。ただしエアバッグが一様な圧力と仮定したとき、つまり流体‐構造完全連成を考慮しないので、有用な結果を出す上で十分に
正確とは言えません。よって近年、さまざまな研究と
産業的環境の中
で、陽解法のソルバーを用い
たアウトオブポジションの状態における複雑な応答シミュレー
ションのためのいくつかの試みがされています。しかし、陽解法
では応
力分布を正確に表せず、また実験データと著しく異なる形状になることもあります。結果と
してエアバッグのアウトオブポジションのシミュレーションは、産業的なエアバッグの開発の中で、いまだ標準的とは言えないのです。信頼性のある陰解法 の使
用が必要です。
ムービーが表しているのは、ドイツ、ミュンヘンのISKOエンジニアAGによる、ADINA陰解
法の解析結果です。ISKOは、自動リメッシング、接触を含んだ流体‐構造完全連成解析によってシミュレーションを行いました。
解析では、いかなる微調整もリスタートもしていません。解析時間はAMDオプテロン4プロセッサーワークステーションを使って10時間です。ADINA
GUIでのモデル作成は約30分です。
この解析結果によって、陰解法に基づくシミュレーションが、産業的環境でエアバッグの展開問
題への見識を得るために使用できることが示されました。そしてこれはエアバッグのデザインを改良するための注目すべき新しい可能性をもたらすでしょ
う。