ADINAの高度な材料モデル
2016.01.31 Advanced Material Models in ADINA
ADINAの高度な材料モデル
まえがき
要求の厳しい工学的なアプリケーションにおいて高度な高分子を使うとき、それに対応できる高度な材料モデルと信頼性の高い有限要素ソルバーが必要です。特に、高分子を使う場合は、時間依存性の粘弾性(viscoelastic)効果が重要になります。たとえば、超高分子量ポリエチレンなどの素材は、生物医学のアプリケーションに使われています。もうひとつの例では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)についてです。別名「テフロン」として知られています。テフロンは低摩擦性、化学的不活性、高温での並はずれた抵抗、腐食性、応力亀裂に対する抵抗性により、産業界においてシーリングやベアリングのアプリケーションに幅広く使われています。これらは接触、温度効果や他の非線形的な条件下において、大きな変形をかなり頻繁に受けます。これらの粘弾性特性の適切な理解が必要です。
お客様の要望に応じて、ADINAはBergstrom-BoyceとThree-Networkの粘弾性材料モデルをサポートします。これら高性能な材料モデルにより、ユーザは高分子の複雑な粘弾性特性をとらえる事ができます。ADINAの強力なソルバー、要素ライブラリ、およびマルチフィジックスな機能によりユーザーはこれらの材料モデルを最大限に活用することができます。
ベンチマーク
小さいパンチテストは、材料を特徴付ける標準的な方法です。円盤上の試料は、ダイにはさまれており、パンチは試料に向かい動きます。パンチは0.5[mm/min]の速度で動き、反力は変位の関数として記録されます。このケースでは、高密度ポリエチレンを試験しています。図1は、試験機の概略図です。
図2は3Dソリッドや軸対称の解析の予測とBergstrom and Bischoffの実験結果を比較しています。参考文献[1]。ADINAのThree-Networkモデルを用いて、材料のテストを行いました。材料パラメータは参考文献[1]から入手したものを使います。これらのモデルは接触摩擦の効果も含みます。ADINAのパワフルな高次混合法(U/P法)は厳しい変形に対する体積ロッキングやせん断ロッキングを防ぐのに有効です。
結果は、Three-NetworkモデルのADINAへの実装が、いかにポリエチレンの実験結果と一致しているのかを示しています。3次元と2次元の軸対称の両ケースにおいて、ADINAは実験データとかなり合う予測をします。もちろん、軸対称モデルは高速に計算できますが、例えば、極端な圧縮圧力下に起こるような非対称モードなどはとらえられません。
熱効果
Bergstrom-BoyceとThree-Network材料モデルは、膨張/収縮と温度依存の粘弾性を合わせ持つ、熱効果も考慮できます。さらに、粘弾性材料は散逸し(例:変形による熱生成)、ADINAはフルカップリングした熱構造連成を行うことで内部熱の結果を予測することもできます。
図3はゴムのCVジョイントブーツを3Dシェル要素モデルを用いた、Three-Networkモデルを示します。このモデルは自己接触、熱効果を考慮しており、熱と構造をフルカップリングした解析です。内部損失は熱生成になります。
結論
設計がより精巧になり、複雑な材料挙動が全体のパフォーマンスに対してより重要になるとともに解析において適切な材料モデルを使用することは同じく重要になります。ADINAは高度な材料モデルライブラリと最先端の要素定式化とソルバーと接触アルゴリズムを提供します。これらはマルチフィジックスのアプリケーションの範囲にまで及んで高度な材料モデルとともに使用することができます。
参考文献
1.J.S. Bergstrom and J.E. Bischoff, "An Advanced Thermomechanical Constitutive Model for UHMWPE," Int. J. Struct. Changes Sol., 2:31?39, 2010.
2.J.S. Bergstrom and M.C. Boyce, "Constitutive modeling of the large strain time-dependent behavior of elastomers," J. Mech. Phys. Solids, 46:931?954, 1998.
キーワード
Bergstrom-Boyce, Three-Network モデル, 粘弾性, 先端高分子, 熱カップリング, 大ひずみ, マルチフィジックス, 接触, ポリエチレン, テフロン