ADINAの破壊モデリング
2015.06.30 Modeling Fracture in ADINA
ADINAの破壊モデリング
発電所、重機、飛行機などの構造物での、き裂進展の可能性の評価において、線形弾性の破壊力学を使った 3Dき裂に沿う応力拡大係数の計算は極めて重要です。
従来ある方法ではJ積分と応力拡大係数は、節点ポイントの仮想シフトに基づく仮想き裂進展を使い計算されます。き裂前縁の周辺では、マップトメッシュが要求されます。しかしながら、複雑な形状のために、き裂前縁の周辺にマップトメッシュを生成することは、なかなか困難です。
ADINA9.1において、3D破壊力学計算は、SVS方式の導入によりかなり改善されます。SVS(Station Virtual Shift)方式の特徴は以下となります。
・温度依存性のない線形静解析のための、混合法の応力拡大係数の計算
・J積分と応力拡大係数は、き裂前縁上のコーナー節点位置で出力されるか、き裂前縁の等間隔に配置された位置で出力されます。
・き裂前縁の周囲は、マップトメッシュできますし、フリーメッシュでも作成できます。
・モデル内で1つのき裂でなく、複数のき裂もできます。
・き裂定義は、ジオメトリベースだけでなく、FEベースでも可能になりました。従来の方法では設定が複雑でしたが、 飛躍的に簡単になりました。
・全ての仮想シフトは、分かりやすく表示されます。
SVS方法が使われる時、き裂前縁の周辺はマップトメッシュにする必要がないので、線形弾性破壊力学解析を行うために必要な工数がかなり減ります。
SVS方法で使われた1つの基本的なアイデアが、仮想シフト領域がメッシュ非依存です。図13に表示されますように、 等間隔に配置されたき裂進展位置で破壊結果が出力される時、これらの位置がメッシュ非依存ですので、メッシュを細かく生成すれば、破壊結果はより精度が上がります。
2012年2月のショーケースでADINA構造解析した、3D破壊力学問題をSVS方法を使用した例を紹介します。2012年2月のショーケースにおいて、き裂前縁はマップトメッシュを使う必要があるためメッシュ作成方法が多少複雑です。さらに、2012年2月のショーケースでは、J積分(応力拡大係数は無く)だけを計算しています。
本ショーケースにおいて、SVS方法を使います。これは、どこでもフリーメッシュが使えて、J積分と応力拡大係数の計算を可能にします。
図1はき裂の有るノズル形状です。
き裂モデル定義
き裂モデルは、下図のように構成されます。
破壊定義
9.1の新コマンドCRACK-SVSはSVSの仮想シフト定義に使われます。CRACK-SVSコマンドの入力項目は以下となります。
・10個の指定した、き裂前縁に等間隔で配置されたき裂進展位置
・各き裂進展位置の3つの放射状の領域の指定と、最外側の放射状の領域半径の指定。
・トップとボトム面としてボディ上のき裂面に相当するFaceの指定をします。
図11は、CRACK-SVSコマンドにより作成したSVS 仮想シフトを示します。図12は、SVS 仮想シフト記号です。
図13は、仮想シフトに沿ったき裂前縁付近の、幾つかの要素を示します。SVS領域は、メッシュから独立しており、き裂進展位置は節点と一致していません。
結果
ADINA構造解析結果を以下に示します。
仮想シフトの最初と最後の結果は表示されません。これらの仮想シフトが開口き裂前縁のエンドポイントになります。他の仮想シフトほどこれらの結果は正確ではありません。この不正確さの理由の1つは、き裂前縁の開口の終わりの仮想シフト領域は、メッシュ内に完全に含まれているわけではないことです。
J積分値は、2012年2月のショーケースの結果ととてもよく一致しています。
応力拡大係数の結果は、き裂前縁で混合法状態が存在することをはっきりと示しています。
J積分値と応力拡大係数の値の両方は、選ばれた放射状の領域に依存していません。
ADINA9.1でSVSの破壊機能は飛躍的な進歩をしています。
キーワード
破壊力学、J-積分、応力拡大係数、仮想シフト、SVS法、有限要素、フリーメッシュ