サスペンションラグ(懸吊環)の破壊メカニズム
2011.11.30 Failure Mechanism of a Suspension Lug
Effective stress
Shear stress
サスペンションラグ(懸吊環)の破壊メカニズム-実験と数値検証
サスペンションラグは、産業分野の様々な場面、特に防衛関連で、とくに重いものを吊るす必要のある ところにとく使われます。例えば、ロケットや飛行機の燃料ポッドの接続に用いられます。 本文では、実験と数値解法を用いたサスペンションラグの破壊メカニズムを調査した検証を報告します。
図1は、サスペンションラグの試験装置です。高強度ステンレス鋼のサスペンションラグは、高強度アルミニウム アダプターのめくら穴にネジ止めされ、垂直方向に引張ります。
図1 サスペンションラグを実験装置に取り付けたところ
実験の主な目的は破壊のふるまいとラグと設定した負荷レベルにおける繰り返し負荷下のアダプターの の破壊限界を理解することでした。[1] 試験は、Ing. Ingbert Mangerig 教授の指揮によって ドイツ連邦軍大学の構造学研究所で実施されました。[2] 二つの異なる破壊モードの実験が観測されました。 破壊モードの一つは、ラグ自身の破壊です。[図2a参照] もうひとつはアダプターの破壊です。[図2b参照] 破壊メカニズムのより良い理解を得るのにADINAを用いて様々な非線形有限要素解析を行いました。
図2 試験所の実験で観測された破壊モード:[a]ラグの破壊と[b]めくら穴側のアダプターの破壊
まず、荷重の伝達メカニズムを調べるのにラグとアダプターの3次元の有限要素モデルを考察しました。 ラグとアダプターの1/4のみで対称問題としてモデル化し、対称面に適切な境界条件を与えました。 ラグは引張力を受けています。[図3a参照] ラグのネジ部とアダプターのネジ部との間に接触条件を 導入しました。図3に幾つかの結果を示しています。アダプターの柔らかい材料がより大きな変形になっている のがわかります。また、ラグのフックの根元周囲と同様に二つのネジ山の谷部にかなりの応力集中が観測できます。
図3 ラグとアダプターの3次元モデル:(a)荷重と反力、(b)変形、(c,d)ラグとアダプターの主応力の等高線
次に、ラグとアダプターの破壊メカニズムを調査するために、2次元の対称モデルを考察しました。 弾性体モデルとマルチリニア弾塑性体モデルの両方を考察しました。さらに、干渉させるネジ山の数に関しても 試してみました。
最初の解析では、下部の3つのねじ山のみが干渉する場合を考え、材料は線形弾性体と仮定しました。この場合の 解析の条件と接触力と応力を図4に示します。
図4 3つのねじ山が干渉する軸対称モデル:(a)ねじ山の接触力、(b)ねじ山周辺の主応力の等高線、 (c)アダプター側のねじ山周辺の主応力の等高線
せん断応力σyz、周応力σxxと有効応力のの等高線を図5に示します。 ネジ穴最深部の谷部に初期亀裂ができると仮定すると、20°の角度でネジ穴最深部のノッチから伸びた線は 等高線の一つと一致していることがわかります。測定された破断角αexperiment=21°によく一致しています。
図5 3つのネジ山が干渉する軸対称モデル:(a)せん断応力σyz、(b)周応力σxx、(c)アダプター側のミーゼス応力の等高線
これまでの解析では、ラグとアダプターの材料モデルは線形弾性体で下部の3つのねじ山のみの干渉を考慮してきました。 より正確に構造のふるまいを予測するためにマルチリニアによる弾塑性材料モデルを導入したもう一つの解析を実行しました。 さらにADINAに搭載されている破断消滅機能”death upon ruptureを適用し、下部の4つのネジ山の干渉で考慮しました。 結果を図6に示します。その結果を観察すると破断線は測定結果にかなり近い結果になっています。上の動画は荷重が大きくなる中で 有効応力とせん断応力の等高線の進展を示しています。同時に、破断していく様子がわかります。
図6 等方硬化則による弾塑性材料則および破断消滅機能を用いた初期亀裂と進展。下部の4つのねじ山の干渉を考慮。
上の検証は非線形構造問題におけるADINAの強力な解析能力を示しています。特に、ADINAが搭載している階層的なモデリング能力が
便利です。particularly useful
ADINAの構造解析能力の概要は、 ADINA Structure を訪れてください。
References
1. Kroyer, R. "Experimentelle und numerische Ermu"dungsanalysen an einer Tragkonstruktion aus hochfestem Aluminium und Stahl", Festschrift zum 60. Geburtstag von Univ.-Prof. Dr.-Ing. Ingbert Mangerig, Heft 10/6, Berichte aus dem Konstruktiven Ingenieurbau,ISSN 1431-5122, UniBw Mu"nchen, 2010
2. Hinz, M. Dauerfestigkeitsversuche an geschnittenen Gewinden aus hochfestem Aluminium, Bachelorarbeit, Universita"t der Bundeswehr,Institut fu"r Konstruktiven Ingenieurbau - Stahlbau, Prof. Dr.-Ing. Ingbert Mangerig, 2010
Keywords:
サスペンションラグ(懸吊環)、スレッドアダプター、破壊機構、実験、数値解析、破断、マルチリニア弾塑性、接触
協賛:
Dr.-Ing. Robert Kroyer, LFK-Lenkflugko"rpersysteme GmbH, Unterschleissheim, Chefingenieur Strukturmechanik/-dynamik,
Systemauslegung/Nachweisfu"hrung, Germany (robert.kroyer@mbda-systems.de)