陰解法を使った、圧壊と衝突の解析

2010.5.30 Crush and Crash Simulations Using Implicit Integration

Crush and Crash Simulations Using Implicit Integration
陰解法を使った圧壊と衝突の解析

 

今日、業務における圧壊と衝突の解析は、大抵の場合、陽解法が使われています。

これには様々な理由があります。

衝撃現象は、非常に急速な現象で、比較的短い時間内に非常に大きい変形と複雑な接触が発生するので、短いタイムステップが要求されます。そのため、短いタイムステップの陽解法は、当然盛んに行われます。

陽解法のアドバンテージは、力の釣り合いの反復計算が無いことで、解析は単純な前進法になります。

そして、'fast'な要素とスキームが使われます。とはいえ、パラメータの調整と注意がこれらの設定には必要です。

ところが、これらの'fast'な要素は、静解析や低速な現象の動解析においては不安定です。

 

一方で、圧壊現象は、低速な動的現象で、比較的に長い時間においても発生し、たいてい静的な現象です。この場合もやはり、非常に大きい変形と複雑な接触の状態が発生します。

これらの解析を、陽解法で解く場合、有効な解析をするために、マススケーリング設定やパラメータ調整の設定に注意しなくてはなりません。

そして、もちろん実際の現場の中でもこのような圧壊と衝突は発生し、この場合ADINAを使い、陰解法を使う事は、圧壊と衝突解析において、明らかに多くのアドバンテージがあります。

 

私達のADINA開発における目的の一つに、圧壊と衝突に有効で信頼のできる解析ツールを確立する事があります。

それには、物理問題をベースに、最も適切な技法(陰解法または、陽解法)を使いわけます。

陰解法と陽解法それぞれの解析において、私達はパラメータの調整の無い安定した解法で使用できる事を常に目指しています。

 

私達は陰解法の技法に集中した開発をしています。なぜなら、この技法が安定しており、信頼性があり、効率的だと分かっているためです。

 

ADINA8.7で陰解法の技法として挙げられるのは以下のものがあります。

 

         滑りや折り曲がりを含む、シェルの両面接触をハンドルできるように改善された接触解析手法

         弾塑性解析で、大ひずみ大変形のための、新しい3Dシェル要素

         パラメータ設定の必要ない大変形に効果的な時間積分スキーム

 

陰解法において、反復計算は、時間ステップ毎に、節点と要素の釣り合い計算を確実に行います。この特徴は、動的解析の重要な要因となります。

もちろん、最初の衝突現象を解析するのに、陰解法は複雑な接触とひずみ状態をフォローするため、多くの時間ステップを要求します。しかしながら、その場合においても、陽解法に対して、計算上競合できます。

 

陽解法の中心差分の時間積分法において、私達は要素に対して完全積分を使います。すなわち、ADINAの陽解法はかなり他社のプログラムに比べて、非効率ですが信頼はできます。

以下に、チューブの圧壊と衝突の解析結果を示します。解析形状を図1に示します。

 

図1 解析形状

 

解析は2case考えます

case1:ピストンの動きを1mphにした場合

case2:ピストンの動きを30mphにした場合

mph=miles per hour)

 

case1(1mph)は、陰解法でのみ解析しました。

case2(30mph)は、陰解法と、陽解法でそれぞれ解析しました。

caseとも、同じメッシュ、同じ要素、同じ材料モデルです。全解析で、完全積分が常に使用されております。

力と変位のグラフを図2に示します。

ase2(30mph)の陽解法(explicit)と陰解法(implicit)におけるピーク荷重は、ほぼ同値で実用的です。

そして、case1(1mph)に比べてかなり高く出ています。

ピーク荷重後の応答は、全体的に似ています。

とはいえ、全モデルに初期不整を負荷しておりませんので、いくらかの座屈挙動の違いは予期されます。

グラフ(a)変位スケール0〜160mm

グラフ(b)変位スケール0〜20mmの詳細

2 力と変位グラフ

 

トップページのアニメーションは、case1(1mph)の解析結果です。

以下のアニメーション(1/2モデル)は、大きい塑性ひずみと両面による折りたたみの詳細な接触状態を明確に示しています。

 

 

これらの事例は、圧壊と衝突の解析問題にADINAをいかに使用できるかを示せたにすぎませんが

私たちは、陰解法でのアプローチが非常に効果的な場合があると信じます。

 

[参照文献]

K.J. Bathe, "Conserving Energy and Momentum in Nonlinear Dynamics", Computers & Structures, Vol. 85, pp. 437-445, 2007.

 

キーワード:

圧壊、衝突、陰解法、陽解法、時間積分、接触、折りたたみ、大変形